「と言うわけでお父さん、お嬢さんをボクに下さい!」

「…アルは本気でオレを嫁にもらうつもりだったのか」
「お前が本気で10年間冗談だと思い続けてたことの方が私は驚きだよ」
「だってアルは弟だしオレは兄ちゃんだし。」
「ああ、見た目は女子高生でもな」
「中身は33才のおっさんだけどな」
「でも見た目にだまされて交際申し込むのがまた増えてきただろう、お前。」
「増えたなーやっぱこの女子校の制服がまずいんじゃないかなー」
「だがシグのたっての願いを無下にできなかったのはお前だ」
「師匠だって勧めたじゃんか」
「まあな。でもどっかの妙な男に引っかかったり引っかけたりするよりは、アルの所にでも嫁に行ってしまうのも良い手だと思うぞ」
「えー…と言うか「引っかけたり」ってのは何?」
「無自覚だからたちが悪いよな。」
「何のことだか良く分からないけど。あ、でもウィンリィにも似たようなこと言われたな」
「何だ?」
「あんたみたいなのをもらうような筋金入りの苦労性はアルくらいしかいないんだから、さっさと覚悟決めとけ、でないとこの先一生縁がないわよー…だってさ」
「…似てるどころか全く逆のことを言ってるような気もするが」

「娘はまだ誰にもやらん!」

「…やっぱりな」
「まあそんなところだろうなあ。シグは本当にお前には甘いから」
「…そりゃ師匠に比べたら誰でも甘いと思うけど。と言うか方向性は違うけど、お父さんは師匠にも甘いと思う」
「当然だ」
「………ええと、ごちそうさま。」
「お前もシグには甘いよな。「お父さん」と呼んでやってるし」
「そりゃ、師匠を「お母さん」呼びから「師匠」呼びに戻したときにお父さんも「シグさん」呼びに戻したらこの世の終わりが来たみたいな顔されたし」
「3才の可愛い盛りの愛娘に突然他人行儀に名前で呼ばれたらお父さんも世を儚むってもんだろう。」
「そう言うもんかなあ」

「もしどうしてもと言うのならばこの俺を倒してからだ!」

「すごいな、本気のシグを見るのは久しぶりだ」
「オレは初めて見た」
「アル!本気を出したシグは強いぞ!」
「強いってどのくらいですか?!まさか師匠よりもですか?!」
「その拳は地を割り天を裂く」
「何か冗談に聞こえないんですけど!と言うかものすごい真顔で言ってますね師匠!」
「お父さん頑張ってー」
「兄さんどっちの味方なの?!」
「よそ見をしている暇はないぞー」

そうしてアルフォンスとシグの死闘は7日7晩続いた。後に「ダブリスの炎の7日間」と呼ばれることとなる実に激しい闘いだった。
(※若干後世の誇張が入っておりますことをご了承下さい)

「くっ…さすがにイズミの弟子のことだけはある…なかなかやるな」
「…まだ、やりますか?」
「いや…これ以上やればお前の両脚を機械鎧にしなければならなくなるだろうな」
「シグさんの右肩もですよ。もう動かすのも辛いんじゃないですか」
「!気付いていたか…」

「と言うかそろそろ晩ご飯の支度しなきゃならないから終わらせてほしいんだけど」
「お前の今後の一生がかかっているはずなんだがなあ」
「その辺はなー二人とも重要なことを見落としてるよなー」
「重要なこと?」
「アルが勝とうがお父さんが勝とうが、その結果にオレが「いや」って言ったらどうするんだか」
「確かにそれは重要だな…で、お前としてはどっちに勝ってほしかったんだ?」
「んー…秘密。」
「おい」
「あ、でもほらもう決着が付いたみたいだし」

「ふっ…ここまで追いつめられたのも久しくなかったな…」
「ボクもです。これでも軍で経験を積んだつもりだったんですが、上には上がいるものですね」
「まあ良い。将来の義理の息子を壊したくはないからな」
「じゃあ…!」
「うむ。娘との交際を認めよう!」
「ありがとうございます!お父さん!」
「ただし!まずは交換日記からだ!」
「ええ?!何で今更!」
「貴様今更と言ったな?!それは一体どういう意味だ、まさか!」
「いやいやいや多分お義父さんが考えているようなことじゃなくて!間に6年の空白があるとは言え30年以上ボクら兄弟やってきてるのに何で今更交換日記?!」
「兄弟って自覚はまだちゃんとあったんだな」
「…それでいて兄ちゃんに求婚する弟の気持ちがオレにはちょっと理解できないや…」
「娘はまだ16才なんだぞ?交換日記だってまだ早いくらいだ!」
「世間的には結婚もできる歳だったと思ったけど違ったっけか」
「と言うかオレの中身は33才のおっさんだってば」
「そんな…っ!この日のためにボクはこつこつお金貯めて小さいけど巨大な書斎と頑丈な実験室のある白い壁のマイホームも建てて兄さんとの甘い新婚生活を心待ちにしてたのに!この上まだ段階踏んで待たなきゃならないなんて!」
「その若さで家建てられるってことは、相当に給料良かったのか、軍人」
「あ、いや足りない分はちょこちょこって横領を」
「おいこら!軍の予算は血税からでてるんだぞ?!それを横領とはどういう了見だ!」
「大丈夫、とある軍産企業からの裏献金で表に出せない金だから!ばれても訴えられないよ!」
「ならば良し!」
「良いのか?」
「それより兄さんはそれで良いの?この先ずっとボクと一緒に暮らしてくれるって言ったじゃないか」
「えーと、それでまずは交換日記だろ?」
「…何も疑問に思ってないみたいだな」
「兄さん…」

こうしてアルフォンスの「奥様は16才」計画は、立ちはだかった父性と兄の恋愛方面特化型天然ボケとにはばまれあえなく頓挫した。
エドワードがバージンロードを踏む日は遠い。

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