アルフォンス・ハイデリヒの葬儀も終わり、気持ちに一区切りが付いたところで今後の身の振り方の話になった。
旅に出ようと思う、と言うエドワードの意見に異論はないが、グレイシアはふと思った。
「それは良いけど、エドは旅費はあるの?」
「え?」
「今までエドが生活費出すとこ見たことなかったから。」
そう言えば、とノーアもエドを見る。
「兄さん…」
「別に金はない訳じゃないぞ」
「そうなの?でもそのお金ってどこから出てるの?」
「どこって」
「学生さんなら奨学金か何かかしらとは思うけど…それを旅費に回せたりはしないわよね」
留学のためのものならともかく、多分大抵は駄目だと思う。ましてこのご時世に国外留学(目的地未定)など難しいだろう。
「…いや、どこであろうと生活していくには先立つものが必要だってのはオレだって分かってるぞ?」
そう言ってエドは右腕をひょいと上げてみせる。
「けど働こうにもこの腕と足じゃ難しいじゃないか。だから手っ取り早く体でも売るかと思ったら」
「げへぅごほっぐふっふほっほふ」
弟が盛大にむせた。
「大丈夫か?どうしたいきなり」
「…っいきなりは兄さんだよ!何でそこでそう言う極論が出るのさ?!」
顔を真っ赤にしているのは羞恥と言うよりは怒りのためだと思われた。
「だって髪なんか切ってもすぐ伸びるだろうし研究用だか医療用だかで売血ってものあるって聞いたし」
「切り売りのことだったのね…」
ノーアが胸を撫で下ろす。グレイシアも詰めていた息をほっと吐いた。
「けど親父が泣いて止めにかかってきてさ。金ならあるから頼むから止めてくれって言うから」
「父さん…」
「で、その親父の金を元手に先物取引で二山ほど当てて一財産稼いだ」
けろっとそう言った。
「稼いだ金のうち半分は金塊に換えて某国某銀行の秘密金庫に預けてあってそれは手つかずだ。残り半分は株とかその他運用してる。」
だから金には不自由してないぞ、と胸を張る。
「困ってないなら何でこんな所に下宿しているの…?」
グレイシアの困惑はもっともだった。
エドワードはちょっと躊躇するように口ごもる。
「あ…それはアルフォンスが」
お前じゃなくて、と弟に言うが弟の方は言われずとも分かっている。
「敗戦やらインフレやらでオレの持ってたドイツ国内の株やら何やらみんな紙くず同然になっちまった、って新聞見てそう言ったら。」
「ああそれで。」
「オレも親父は行方不明だし研究の方とかの条件もいいからその話に乗ったんだけど」
無一文になってしまった彼に同情したのだというのはいかにも彼らしい話だと思った。
「でもさ、だからってオレも生活費くらい出さないのは悪いって思って一度出したんだよ。そしたらあいつ泣きそうな顔でもうこんなことは止めてくれって言ってきて」
「……兄さんその金の出所は」
「オレが自分で稼いだ金だって言った」
それだ。
多分アルフォンス・ハイデリヒは何かを誤解したのだろう。…それも彼らしい話だと思ってしまった。
ついでに言えばエドワードの言いようも誤解を招きやすい。やはりそれもエドワードらしかったが。
「実際の所、オレが大損したのってドイツ国内限定の話であって、国外にも分散しておいてるからトータルで見ればほとんど減ってはいないんだよな。」
参考までにとドイツ国内での損失額を聞いてグレイシアはふらりと気が遠くなった。
それでも「トータルでそんなに減ってない」と言うことは彼の「一財産」は一体どの位の額になるのか。
「…結局兄さんはどこに行っても『錬金術師』なんだね…」
年に似合わぬ遠い目をしてアルフォンスが呟く。
「頼もしい兄ちゃんだろー?アル」
「うん、そのはずなんだけどね、何でものすごーく先行きに不安感じちゃうんだろうボク。」
ノーアは弟に全面的に賛成だった。

(240905)
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