「あの短時間にこれだけの物が作れるんだから凄いと思うけど」
きつね色の焦げ目の付いたパン・ペルデュをほおばってアルフォンスは言った。
「これくらいなら誰でも作れるだろ?」
牛乳浸して卵絡めて焼くだけなんだし、火加減にさえ気をつければ大したもんじゃない。
気負った様子の全くないエドワードにリン・ヤオは苦笑した。
「こいつの場合は一通りの物は作れる癖に自分一人のためにはやろうとしないって辺りが問題なのよ」
ウィンリィは行儀の悪いことにナイフでエドワードを指し示した。
「たまーに気が乗って作ってもそれがまたアレなもんが多くて微妙だし」
「たとえば?」
「月曜日にポトフを作るの。」
「普通じゃないカ」
「…普通じゃないポトフなの?」
恐々とリィが訊いた。がこがこ動いていた謎の錬成物を思い出してしまったようだ。
「あ?いや普通のポトフだと思うぞ?キャベツ4つ割タマネギ二つ割りニンジン乱切りセロリも適当に切って葉まで入れて」
「そうね…ちゃんと牛肉は凧糸で縛ってまめにあく取りもするからスープも澄んできれいよね」
「どこに問題が?」
「火曜日も、ポトフなの。」
「次の日の方が味馴染んでおいしいってよく言うけど…」
「そうだよなあ?」
同意を求められてもちょっと困る。ウィンリィは無表情に続ける。
「水曜日には、そのポトフの残りにルーを入れてクリームシチューにするの。」
「野菜が足らなくなってたりするからちょっと足したりするな。」
「木曜日にはカレー粉を足してカレーシチューにするの。」
「このころになると肉はもう見当たらないから適当に鶏肉でも豚肉でも何でも足してみるな。」
「金曜日には水とコンソメ入れてカレースープにするの。」
「さすがにかさそのものが少なくなってるからな。」
「土曜日もカレースープなの。」
「バリエーションつけるためにニョッキ(ジャガイモ団子)を入れたりするな。」
「そうして日曜日にようやく鍋を洗うのよ…」
ウィンリィが遥か遠い目でそう結んだ。学生二人は言葉もない。
「ああ、でも水曜にルーじゃなくてトマトとスパイスを足すバージョンもあるぜ」
屈託がないのはエドワード一人だ。リィでさえ、ぽかんと口を開けている。
「…一応聞くけど、その場合も鍋を洗うのは日曜?」
「………あー…ああ、そうだな」
しばし考え込んだあとの答えはやはり予想通りのものだった。
「せっかくまともな料理の腕持ってるんだからもっとまともなご飯作って食べなさいよ!」
「えーだって面倒じゃねえか」
「そんな事言ってるとその内食べることそのものがめんどくさいとか言うようになるわよ!!」
「そうかもなーそういや昔の上司がそんな事言ってた」
「え?」
「放置してたら1週間チーズクラッカーとクラレット酒で生存してた。」
秘書官に銃突きつけられてそれでようやく改善してたっけ、とけらけらと笑う。
「オレはそれよりはマシじゃねえかな」
リンの脳裏には五十歩百歩という言葉が浮かび、アルの胸中には同じ羽毛の鳥は集まるということわざが浮かんだ。
リィが小さく首を傾げた。

(290605拍手お礼/010905)
□back□
本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース