エドワードは外猫だった。人から餌はもらうが飼われているわけではない。
暖かな室内がきらいなわけではないが、野原を思い切り駆け回ることの方が好きだった。
あれをしちゃいけない、これをしちゃいけないとくどくど言われながらぬくぬくと過ごすのは性に合わない。
自分で選択したことに悔いはない。
「だからこれは当然の結果なんだ」
「解んないよ兄さん」
アルフォンスはかりかりと窓枠を掻いた。
「いいから中に入っておいでよ。風邪ひいちゃうよ?」
なおも勧める窓越しにエドは鼻先を寄せる。ひげをつたって滴がぽたぽたと落ちる。
濡れそぼった身体は毛皮もぺったりとして、ただでさえ小さな身体が余計に小さく見えた。
ここ数日降り続いた雨は今日も変わらず辺りを無彩色に変えている。
「いいよ。オレはお前が風邪ひいたりしてないか見に来ただけだから」
元気そうで安心した、としっぽを揺らす。
「ボクより自分の心配をしてよ!」
「オレは慣れてるから大丈夫だ。それよりお前、何か悪いもん食べたりはしてないか?」
「兄さんこそ、悪くなってる物を拾って食べたりしてない?この時期食べ物も傷みやすいって言うし」
「腐ってるか腐ってないかも分からないで野良猫はやってらんねーぞ」
「そりゃそうだろうけど、兄さんの場合は「これくらいなら大丈夫」とか言って明らかに大丈夫じゃないものも食べちゃいそうで怖い」
ふん、と小さく鼻を鳴らす。
「飼い猫やってるよりは胃も丈夫だからな」
「食べてるんじゃないかーっ!」
アルフォンスの怒鳴り声が窓ガラスにはじかれる。
兄はびくりと肩をすくめたが大して堪えた様子は見えない。
「雨宿りならちゃんとしてる。…大丈夫だから、心配するな。」
そんなの無理だよ、とアルフォンスは小さく呟く。
エドワードはとどかない弟の代わりに窓に付いた水滴をぺろりと舐めた。
「それじゃもう行くぞ。温かくしてろよ。」
「兄さん!兄さんこそ!」
しゅるりと長い尾が金色の光を返して、あっと言う間にその姿は雨の向こうに見えなくなった。
それでもしばらくの間、アルフォンスはそこに佇んでいた。

(190605拍手お礼/270805)
□back□
本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース