こんにちは、アルフォンスです。今日は国家錬金術師の資格試験です。
筆記試験も無事に通過し、提出した論文の口頭試問を受けることになっています。
…何だかイヤな予感がしています。
自信がないとかそう言うんじゃない。自信なら勿論、あるに決まってる。
けれども。
説明する係員の「審査員に論破されたらそこで負けと言うことになります。」という一言が妙に気にかかる。
「あの…負け、と言うことはそこで不合格、と言うことでしょうか?」
「ああ、そうとも言いますね」
明るく笑うまだ年若い軍人さんとは裏腹に、受験者の表情はいっせいに引きつった。
それなら最初からそう言えばいいのに。
不安材料はそれだけじゃない。
どうもこの待機室にいる受験者の数が多いような気がする。
呼ばれるのはひとりずつ。試問を受けるのもひとりずつ。
論文は当然の事ながら力作揃いであろうし、あの筆記試験を通過するほどの頭脳の持ち主達でもある。
この人数今日中に捌ききれるのかな。
…と思っていたらひとり平均5分ほどでえらく憔悴した状態で部屋から出てくる。
そんな受験者を気遣う様子も見せずに「はい次の方ー」と係員が呼ぶ。総合病院の待合室みたいだ。
そんな事を考えていると、たちまちボクの番になった。
扉を開けて中に入る。部屋には椅子が一つ、それと向かい合うようにもう一つの椅子があって試験官が座っている。
試験官の脇には小さな机があって、論文が山積みになっている。…机の下の段ボール箱に放り込まれているのはもう済んだ受験者達の分だろう、多分。
机とは反対側の壁の前にはずらりと椅子が並べられて、何人かの軍人が座っている。
あ、大佐だ。立会人と言うことか。
促されて席に着く。
「アルフォンス・エルリックです。…って、兄さん!?」
「よ。」
「何やってるのさ兄さんこんな所で!」
「何って試験官。」
「何で!」
「現役国家錬金術師が試験官やってたって何の不思議はないだろうが。」
それはそうなんだけど。
顔を上げた試験官が見慣れた金色の目を瞬かせて笑ってたら驚くよ本当に。
「だって何も聞いてなかったし。」
「言える訳ないだろう、お前受験者なんだから。」
それもそうなんだけど。ああ大佐がにやにや笑ってる。
「それに何でそんなフリルとリボンとレースまみれの格好なの?」
似合ってるけど。似合いすぎて怖いけど。
元々男だったはずだよねこの人。生まれて十数年間、男でやってきたんだよね。ボクの兄さんだったんだよね。
「始める前に着せられた。やっぱり変か?」
「いや全く全然。」
ちょっと不安げに裾をつまみ上げてみせるけど、下手な女の子よりもその仕草は可憐だ。
…一刻も早く兄さんを元の身体に戻さなくちゃ。ボクの女の子としての沽券にも拘わる。
「さて、雑談はその辺にして、そろそろ始めるか。」
白く細い指で眼鏡を押し上げる。ふっと目元が強気に笑う。
男の時の兄さんだったらそれはただ恰好良いだけだったけど、今はちょっと違う。
華奢な身体に甘い少女趣味な服とあいまって、アンバランスだけど妙に凄味のある色気になる。
「手加減は、しないからな。」

その言葉通り、兄さんは全く容赦なしだった。ボクは30分近くで論理の穴を4つほど指摘され、それに答えられなかった。
「それでも良く粘った方だったぞ」と後から言われたけど、何の救いにもならない。
マスタング大佐曰く、「あの見た目に騙される者が続出だった」そうだ。
…それであんな服着せられてた訳だ。確かにお人形さんみたいなロリータ少女が相手じゃ油断もするだろう。
「中には秒殺だったのもいたからな」
そう言われたって何の慰めにもならない。
大体純粋に錬金術の理論のみではボクは兄さんに勝てないんだってば。
「結局、今年は合格者なしだったな」
「…何であんなこと引き受けたのさ、兄さん。」
多少恨みがましい目になっていたのかもしれない。兄さんは困ったように苦笑した。
「あれが今年のオレの査定だったんだよ。」
ぽんぽん、と頭を撫でてくる。
「そうでなくたって手を抜く訳にはいかないだろ、オレとしちゃ。」
「それはそうだけど…」
「ま、国家錬金術師だけが手じゃないんだから、な?」
こうして、ボクの国家資格挑戦は終わった。
でも兄さんを元に戻すのは諦めないからね!分かってるね、兄さん!

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