国家錬金術師は軍属である。軍人ではない。
「だから正装といった場合は普通に言う正装であって軍服で正装する義務はない。違うか?」
「本当にその解釈で正しいのか?軍人であり国家錬金術師でもあるロイ・マスタング大佐?」
机を挟んでの国家錬金術師同士の攻防が続いている。
机の上には数枚の書類と封筒が2通。薔薇茶色の封蝋で封緘がしてある。
そこまでは執務机という性格上許容できる範囲だったが、白いワンピースに白い帽子、手袋とおそらく靴の収められた箱までが載っていた。
「良いじゃない兄さん。きっと似合うよ」
さらりとしたショールを検分してたアルフォンスがどこかウキウキとした声で言った。
「お前本気でそれ言ってるのか?!どっちの味方なんだよアル!」
「ほぼ全面的に大佐かなあ」
食ってかかる兄に淡いシャンパンカラーのショールをふわりとかける。
ちょこんと首を傾げる弟がいたくご満悦なのを見て取ってエドワードは歯がみする。
「だって正式な招待を受けたならちゃんとした服装をするべきだと思うよ」
「だからってな」
「そうだぞ、鋼の。こういう時のためにわざわざ用意しておいたのだ」
「いつ来るか分からない機会のために少女服を抽斗に常備しておくあんたの神経が分からねえ」
「そういわないであげて、エドワード君。実際の所は衝動買いだったらしいの。」
「え、何それ」
中尉があっさりと暴露する。正直何のフォローにもなっていない。
「ヒューズ中佐のお買い物に無理矢理付き合わされた時についふらふらと買ってしまったとの証言が」
「…何だ別に用意周到だったってわけじゃないんだ」
「だがこうして役に立つ日が来たから良いだろう!」
必死で言い繕うが無駄だった。
エドワードはちらりとホークアイを見てふくれっ面で言った。
「どうせ正装しなきゃいけないなら、まだ軍服の方がマシだ。」
それでもショールの手触りは気に入ったらしく何となく巻き付けたままだった。
「こーんなひらひらふわふわしたのよりは、中尉みたいにきりっと恰好良い方が良い」
「あら。ありがとう」
誰でも褒められて悪い気はしない。
ふむ、と大佐が思案げに腕を組む。
「でも…サイズがあったかしら。」
ぴくり、とエドワードが反応しそうになるのでホークアイはそれ以上は口にしなかった。
「それならば心配はいらん。かねてからこんなこともあろうかと用意してある」
自信満々でマスタングは抽斗を開けた。
「…なあ、もうどうしてそんなことがあるかもしれないと予測して用意しておこうと思ったのかとは聞かねえけど。」
「…どうしてそんなところにしまってあるんですか?」
「細かいことは気にするな!」
「ワンピースの時もそうだったけど、どうやってしまってあるんだ?靴も帽子も入ってたはずなのに服に皺一つないし」
「錬金術とか」
「あとで分解させてもらおうぜ、大佐の机」
「うん、そうだね。仕組みが分かったら応用できて旅に便利そうだもんね」
「あーそこ。一応機密なんかも入っているからそういうことは止めなさい」
「はーい」
「明らかに返事だけは良いな。…まあいい。サイズは合うはずだが合わせて見たまえ」
見るからに小さめの軍服ひとそろいを渡されて、早速広げてみた。
「…なあ、大佐。何でスカート?」
「礼装だからな」
「悪かった、聞き直す。何でミニスカート?」
おそらくは膝上15センチ。
「何を言う鋼の!君の数少ない取り柄の脚線美を生かさないでどうする!」
「おいこら数少ないってどういうこった」
「発育不良で胸もなく腰回りも寂しいがその右脚は充分いける!」
「いけるって何がだ?!」
パンと拍手一発右腕の機械鎧を刃に錬成する。その後ろでは中尉が銃を構えている。狙いは大佐だ。
「すみません、中尉。先方には大佐も兄さんも欠席と伝えて頂けますか?」
アルフォンスが静かに重心を落として構えを取る。
「そうね、仕方がないわね」
無表情にホークアイが頷いた。じわりと包囲が狭まる。

その後、大佐の無事を確認したものはいないと言うが未確認である。

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