鋼の錬金術師が中央の軍の施設内、人目に付きにくい所で深々と溜息を吐いているのを偶然ヒューズ中佐は目にした。
「どうした?なんかあったのか?」
「あ…中佐。」
上げられた顔は心なしか血色が悪い。
「おい、本当に大丈夫か?顔色良くないぞ?」
「…そっか、やっぱそう見えるか…」
小さく呟いて、誤魔化すように笑顔を作る。
「ごめん、大丈夫だ。ちょっと寝不足なだけだから。」
「本当にそれだけか?」
逃げられないように歩を詰める。わずかにひるんだ所を見ると、図星らしい。
「…お偉いさんにでもなんかされたか?」
ヒューズは声を潜めた。この子供がちょっとやそっとのことでは揺らがないことは知っている。
現実に立ち向かうことはもちろん、理不尽を呑み込む術さえも知っている。
そうして己の裡に全て納めてしまう子供の姿は、ヒューズの目には痛々しかった。
「困ったことがあったらちゃんと言えって。」
真剣な表情で目を覗き込んでやると、笑みが消えた。
「…別に、いつものことだから。」
ふっと俯くエドワードに、ヒューズは内心舌打ちする。
そして頭の中で行状のよろしくない上層部をリストアップしていき、いくらかふるいに掛けていく。
今現在中央指令部内もしくは大総統府にいて鋼の錬金術師と接触したであろう人物。
「口止めされてるし、か?」
「…うん。」
「最低だな。」
吐き捨てるように言う。
「え?いやそんな事もないと思うぞ!」
「は?」
慌ててエドワードが擁護する。
「…何か行き違いというか誤解というか、があるような気がするんだけど。」
「…オレもそう思う。」
「んじゃはっきりさせとこう。エド、お前何された?誰にまでは言わなくても良いから。」
エドワードは少しの間逡巡を見せたが諦めて答えた。
「…いつもこっちに来るとさ、必ず人気のない所に呼ばれてさ。絶対誰にも言うなっていって。」
そう言って上着のポケットに手を突っ込む。
「お菓子をくれるんだよね、某将軍。」
はい、と言われたので思わず手を出すとその上にどさどさと色とりどりのキャンディやらチョコレートやらを載せられる。
「弟と分け合って食べるんだぞ、とか言って食べきれないくらい持たされるんだ。」
そう言われても困るんだけど、アルは食べられないしさあ。
相手に悪意がないだけに断れない。
「中佐の娘さんは食べる?食べるんなら手伝って欲しいんだけど。」
「ああ…まあ食べるけど。」
「良かった、ほら、今日はどうも見るからに調子悪そうに見えたみたいでさあ。いつもより余計にくれたんだよね。」
フードに手を伸ばし、そこからもボンボンを取り出す。
手の上のお菓子の小山をしげしげと見て、ヒューズは呆然とするしかなかった。

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