その声は完全に呆れていた。
「…何やってんだ?お前。」
無理もないと思う。兄さんじゃなくても、首を傾げる光景だったろう。
兄さんの調べものを待つ間、ボクは少し離れた川原にいた。
小川は町の大きさに見合った水量で、泳ぐ魚の影が時折見えるくらいにきれいだった。
水遊びをするには早い季節だけどお天気は良くて、ひなたぼっこをするには最適だと思う。
日当たりの良い斜面には一面に白詰草が咲いていた。
あんまり沢山咲いているものだから、これならと思ってやってみたんだけど。
冷静に、客観的に見ると川原で大きな鎧姿で花冠を編んでいるのは…異様?
屈んで手元を覗き込んできた兄さんの頭に、編んでいたそれを乗っけた。
「うん、似合うよ」
ちょっと形が歪んじゃってるけど。
柔らかい空の色と、お日様の色を受けてますます金色に光る髪と白い花と。
昔何かの本でそんな絵を見たような気がする。何だっけ。
困ったように兄さんが首を傾けたら、ほろほろと冠は崩れた。
「あーあ」
「ごめん、ちょっと緩すぎたみたい」
「仕方ないだろ、作るの久し振りだったんだし。」
そっと冠を外すと、兄さんはボクの隣に座った。
頭の後ろの方に、白い花がまだ残ってる。…黙ってよう。
崩れてしまった原因は兄さんが言うように久し振りだったからと言う訳じゃない。
力の加減が難しかったんだ。この大きな鎧の身体は、手も指も大きく力強い。
白詰草の茎は細くて儚げで、すぐにちぎれてしまいそうで怖かった。
それでも、どうしても作ってみたくて恐々と編み上げればこの通り。
多分兄さんはそう言ったことも分かった上で、触れもしない。
手に持った冠はどうするのかと思っていたら、その辺の花を摘み取って差し込んでいく。
一度は崩れてしまった冠はだんだんとしっかりとしたものになっていった。
ついでのおまけなのか手の届く所に生えていた黄色いタンポポや濃いピンク色の蓮華草もちらほらと混ざっている。
何だか豪華になった花冠を、兄さんはボクの頭に乗っけた。
「よし、似合うぞ。」
うんうんと至極満足げに頷いている。
「似合う?」
そうかなあ。ボクの困惑をものともせずに、兄さんは笑っている。
あんまり楽しそうに笑っているから、まあいいか、と言う気分になってくる。
「まるで世界の王様だ。似合うよ。」
一体何処の世界の王様だよ、と言ったが取り合ってもらえなかった。
戻るぞ、と言って立ち上がり促す兄さんこそ、王様のようだった。物凄く偉そうで。
ボクらはそのまま、宿まで戻った。宿の親父さんが目を丸くしていたのを見て、兄さんが愉快そうに笑った。

(250704)
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